Sleep
そよ風があたりを吹き抜け、空気は春というよりも夏を思わせた。
手元の活字から離れ、先日とは打って変わった青空を見上げる。綺麗に晴れ上がり、細切れになった雲が流れていく。上はずいぶんと寒いのだろう。陽光が降り注ぐ中では、想像がしづらい。それでも、見上げて透き通った青は、冷たさを含んでいるような気がした。
「ん…」
さらさらとした手触りを提供してくれていた主の鼻にかかった声が聞こえた。彼の宝石のような輝きを脳裏に浮かべ、視線を下げる。
とろけたような表情で普段以上にはかなげな顔と出会う。赤い目と赤い髪と。それらが際立つものの顔のパーツはおっとりとした雰囲気を醸し出す。
「まだいいぞ」
絹糸のような髪の感触を楽しみながら、寝かしつけるように額をなでる。
このところ、根を詰めていたのだ。しっかり休んで。無言のメッセージに気付いたのか。焦点が定まらない中、お世辞でもさわり心地がよいとはいえない手のひらを彼の手で抱きしめる。
感触を味わうように頬を摺り寄せて、寝息の主の顔にじんわりと広がった笑顔。そして、そのまま安心したのか心地よかったのか、再び穏やかな寝息を立て始めた。
幼いものの整った顔立ちを眺め、今日は食べやすくて栄養価の高いものを作ろうかと考える。
膝の上の活字本がさびしそうに揺れていた。