Infinite tragedy―無限の悲劇―
吟澪(ぎんれい)は、ふと思い付いた様に、斜め読みしていた新聞から目を上げると、傍で寝を決め込んでいた哨(しょう)を見て、呟いた。
「なあ……お前一体何でできてんの?」
「は?」
一体何を言い出すのかと、怪訝そうにした哨が目を開けた。
「何って……普通に血と肉でできてるでしょ。貴方頭おかしくなったの?病院行く?ああ、でも付いて行かないから一人で行ってよね。」
「ひでぇな……。」
苦笑した吟澪に哨が心揺さぶられた様子はない。至って平然としている。
「なんかお前って、ほら、あー……そう、霞食って生きてそうだと思ってさ。」
「貴方、僕を何だと思ってるの?」
哨は呆れて物も言えないといった様子で溜息を吐くと身を起こし、吟澪に向かい合った。
「大体、僕も貴方と一緒に食事したりしてるでしょ。」
「まあ、そうなんだけどさ……。」
今一納得のいかないような表情をする吟澪。哨が自分と同じ生き物だという事に違和感を覚えているようだ。
「そんなに信じられないのなら、試してみれば?」
「どうやって?」
心底不思議そうにしている吟澪。彼は感情がよく表情に出る。
「どこか切りつけてみればいいじゃない。それで、中身を確かめてみればいい。」
さらりと言う硝に吟澪は少し驚いたようだ。
「じゃあ、さ。お前、俺に殺されてくれるの?」
吟澪は軽い調子で言ったが、その目は全く笑っていない。本気で言っているのだと云う事が窺い知れる。
それに気付かない哨でもないから、彼も笑顔でするっと答えていた。
「それは駄目。だってそれじゃあ、僕は貴方を殺せない。貴方の最期は僕のものだから。……でも、そうだな……。ああ、お互いの頭を同時に銃で撃ち抜くとかならいいかもね。お互いの最期はお互いの手で。……うん。いいね、それ。我が案ながら気に入ったよ。」
「ふっ……お前らしいな。」
吟澪は感心半分呆れ半分で笑った。
「だけどなんか、もの凄い愛の告白みたいだな。それ。」
「だって、貴方は僕の相棒でしょ?」
硝は当然のように言い切った。
そして吟澪もまた、その言葉に含まれる感情を読み取り、微笑った。
「ああ、そうだな。俺たちは唯一無二の相棒(パートナー)だ。恋だの愛だのより深い絆で繋がる、な。」
何処からともなく鐘の音が鳴る。
「もう時間だ……。」
「そうみたいだな。」
二人は揃って壁越しに外を見つめる。
ふと哨が立ち上がり、吟澪に手を伸ばす。
「さあ、火蓋は切って落とされた。永遠の戦に身を躍らせようじゃないか。永久の悲劇に光はない!」
そして、世界は、血と、硝煙と、悲鳴と、恐慌と、歓喜と、懇願と、非情と、高笑いと、死と、生と、勝者と、敗者と、哀しみと、悦びと、混乱と、狂喜と、騒乱と、そして、“悲劇”に包まれて、陽は廻る。