The eternal dark―永遠の暗闇―

梛稀(なき)は思う。「終わり」とは何なのか。
獅聯(しれん)は思う。「始まり」とは何なのか。
何時始まったのか、何時終わるのか、何もかも分からないこの戦いで、ひとは皆狂ってゆく。
「ねぇ、なんで梛稀はこの戦いに身を投じようと思ったんだ?」
「……物凄く今更な質問ね。」
二人が共に戦い始めたのはもう5年以上も前の事だ。
「だって女性は家に籠って隠れていたって許される身なんだよ?敢えてこんな戦場に来る必要はない。不思議に思って当然だろう?」
梛稀は、少々の驚きと呆れと相変わらずだという思いで苦笑を洩らした。
「そうね、敢えて言うなら私の能力が一番活かせる仕事場が此処だったからよ。」
「能力……かぁ……。」
獅聯は唸るように呟く。
「そう。まあ、あなた程この仕事に向いてるとは思わないけど、ね。」
「う〜ん。俺はこれ以外できないからなぁ……。」
天を仰ぐ獅聯にくすりと笑う梛稀。
「本当にそうね。天職なんじゃない?」
「そうかもしれない。……でも、梛稀の能力って俺と違って、物凄く応用利くよな?他の仕事だって出来たんじゃないか?」
「あら、まだ引っ張る?その話題。」
少し驚いた様に笑う梛稀。しかし慣れているのだろう、普通に会話を続けた。
「確かに、出来ない事もないけれど、力が大きすぎても、また問題なのよ。」
「う〜ん……。そうかもなぁ。」
納得した様子の獅聯だったが、その実、彼がその科白で話題を逸らされた事に気付いているのか、いないのかは梛稀にも判断できなかった。
「取り敢えず、もう直ぐ鐘が鳴るし、これからの戦いの為に準備をしない?」
「ああ、そうだな。」
獅聯・梛稀共に、己の武器や防具を身に纏い、戦いに備える事にした。
「……いつも思うけど、なんだか面倒臭いなぁ……。」
「そんな事言って装備を怠ると、死ぬわよ?」
「……分かってるよ。」
渋々と、しかし確実に複雑な防具や武器を身に着けてゆく獅聯。
梛稀も獅聯同様相当慣れているようだ。最早彼らにとって日常なのだろう。
「……さて、っと。じゃあ、行きましょうか。」
「うん。」
二人は天井越しに空を仰いだ。
そして、梛稀はふと独り言の様に、囁いた。

「この戦いは、最早どちらが正義でどちらが悪かなんて分からない。ただの意地とエゴとで続いているだけの戦い。誰も彼もが信じられない世界。……でも、あなただけは信じられるのだと、そう思っているのよ、獅聯。」

驚いた様に梛稀を見詰める獅聯。
それに気付いて視線を戻した梛稀は微笑っている。
「なんっか、それ、凄い告白?だね……?」
「あら、やっと気付いた?」
不敵に笑いかける梛稀。
それに対して、驚いた獅聯は、
「……えっ……えっ!?ちょっ、それ、どういう事!?」
「さぁ?」
首を傾げて適当に流した梛稀は、外に向かって歩き出す。
「致命的に鈍いあなたじゃないんだから、5年以上一緒にいた相手の気持ち位分かるのが、当然と云うものじゃない?」
「えぇっ……じゃあ、俺の気持ち、気付いて……!?……え、えぇっ!?それって……俺に応えてくれたって事!?」
完全武装した梛稀が出入り口で立ち止まって振り返るが、獅聯には逆光で表情は見えない。
「……どうでしょうね?でも、そうね……ああ、この戦いが終わったらその問いに答えてあげても、いいわよ?」
「それって、それって、一体いつになるのさっっっ!!!」
クスリと笑う梛稀の声に重なった、獅聯の悲痛な叫びがこだました。